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NASの初期設定とRAID構成失敗しない選び方【2026年最新版】完全ガイド

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この記事のまとめ

NASは「自分だけのプライベートクラウド」。写真・動画・書類を家の中で一元管理し、PC・スマホなど複数端末から同時にアクセスできます。

RAID選びの結論:2ベイならRAID 1(ミラー)が堅実。4ベイ以上ならRAID 5/6が現実解。SynologyユーザーはSHRを選べばOK。

最重要ポイント:RAIDはバックアップではありません。3-2-1ルール(コピー3つ・媒体2種類・オフサイト1つ)で別途バックアップを設計しましょう。

初心者ベストバイ:Synology DS223j + NAS用HDD 4TB×2(合計約6〜7万円)でRAID 1/SHR構成がおすすめ。

 

NASとは何か?初心者が5分でわかる基礎知識

NASの定義と仕組み

NAS(Network Attached Storage)は、自宅のルーターにLANケーブルで接続して使うネットワーク接続型ストレージです。内部にはHDD/SSD、CPU、メモリ、専用OSを搭載しており、小型のサーバーに近い構造を持っています。

最大の特徴は、同じネットワーク上のPC・スマホ・タブレット・テレビなど複数のデバイスから同時にアクセスできること。VPNや専用アプリを使えば、外出先からインターネット経由でもアクセスが可能です。

初心者の方には「自分だけのプライベートクラウド」とイメージしていただくのが一番わかりやすいでしょう。Google DriveやiCloudのように使えるけれど、データは自分の家にある。それがNASです。

外付けHDDとの違い

「データの保存先なら外付けHDDでいいのでは?」と思われるかもしれません。確かに、1台のPCにだけ繋いで使うなら外付けHDDで十分です。しかし家族みんなで使いたい、スマホからもアクセスしたい、外出先からも見たい、となるとNASに軍配が上がります。

比較項目 外付けHDD NAS
接続方法 USB(PCと1対1で直結) LAN(ネットワーク経由)
同時アクセス 基本的に1台のみ 複数デバイスから同時に可能
外出先アクセス 不可 VPN/アプリで可能
データの冗長性(RAID) なし あり(ディスク故障に備える)
常時稼働 PC電源に依存 独立して24時間稼働
価格 安価(数千円〜) やや高い(本体+HDD)
セットアップ 繋ぐだけ 初期設定が必要

 

クラウドストレージとの違い

クラウド(Google Drive、iCloud、OneDriveなど)との最大の違いはコスト構造とプライバシーです。クラウドは月額課金制で、例えばGoogle Oneの2TBプランは月額約1,300円。5年間使うと累計約78,000円になります。一方、NASは初期投資(2ベイNAS+HDD 4TB×2で約6〜7万円)のみで月額費用がかかりません。大容量データを扱う家庭では2〜3年でクラウドの累計コストを逆転する計算です。

プライバシー面では、NASはデータが物理的にユーザーの管理下にあり、外部事業者を介しません。転送速度もローカルLAN経由で高速なため、大量の写真・動画を扱う場面ではクラウドとの速度差が顕著に出ます。ただし、NASには機器の物理的故障や災害リスクがあるため、クラウドとの併用が理想的なバックアップ戦略となります。

ポイント:NASは「クラウドの代わり」ではなく「クラウドの補完」

NASとクラウドは対立するものではありません。普段のデータ管理はNAS、万が一の災害対策としてクラウドにもバックアップ、という組み合わせが最も安全です。

 

NAS本体の選び方:主要メーカーと人気モデル

家庭用NAS市場には複数のメーカーがありますが、日本で入手しやすく初心者にもおすすめできるのは主に4社です。それぞれ特徴が異なるので、ご自身の用途に合ったメーカーを選びましょう。

Synology(シノロジー):家庭用NASの定番

台湾メーカーのSynologyは、直感的なOS「DSM(DiskStation Manager)」と豊富なアプリエコシステムが最大の強みです。日本語完全対応で、正規代理店フィールドレイクによる電話サポートもあります。

DSMの主要アプリには、Google Photosライクな写真管理「Synology Photos」、クラウド同期「Synology Drive」、包括的バックアップ「Hyper Backup」などがあり、スマホからの写真自動バックアップにも対応しています。初心者には独自RAID「SHR(Synology Hybrid RAID)」が扱いやすく、初期設定でもデフォルトで選択されます。

モデル ベイ数 CPU メモリ LAN 価格目安
DS223j 2ベイ Realtek RTD1619B 1GB 1GbE 約30,800円
DS223 2ベイ Realtek RTD1619B 2GB 1GbE 約42,600円
DS225+ 2ベイ Intel Celeron 2GB 2.5GbE+1GbE 約56,500〜64,500円
DS925+ 4ベイ AMD Ryzen 4GB 2.5GbE 約103,500円

 

注意:2025年以降のPlusシリーズはSynology純正HDDのみサポート

DS225+以降のPlusシリーズは、Synology純正HDD(HAT3300/HAT5300シリーズ)のみが公式サポート対象に変更されました。jシリーズやValueシリーズ(DS223j/DS223など)は引き続き他社HDD利用が可能です。購入前に必ず確認しましょう。

 

QNAP(キューナップ):マルチメディアに強い

同じく台湾メーカーのQNAPは、ハードウェア性能に強みがあります。HDMI出力搭載モデルが多く、テレビに直接接続して4K動画を再生できるのが特徴です。OSの「QTS」は多機能ですが、UIがやや複雑なため中級者向けの印象があります。

モデル ベイ数 CPU メモリ LAN 価格目安
TS-233 2ベイ ARM 4コア 2GB 1GbE 約25,000〜28,000円
TS-216G 2ベイ ARM(NPU内蔵) 4GB 2.5GbE 約38,500円
TS-264 2ベイ Intel N5095 8GB 2.5GbE(HDMI 2.0搭載) 約55,000〜65,000円
TS-462 4ベイ Intel N5095 4GB 2.5GbE(HDMI 2.0搭載) 約65,000〜75,000円

 

Buffalo(バッファロー):HDD内蔵で即使える日本メーカー

日本メーカーのBuffaloは、HDD内蔵の完成品が主力で、開封してすぐ使える手軽さが最大の強みです。家電量販店で手軽に購入でき、日本語サポートも完備。さらにDTCP-IP対応で日本の地デジ録画番組を他の部屋のテレビで視聴できるのは、日本市場ならではのメリットです。

一方で、NASキットではないためHDD交換の自由度が低く、アプリエコシステムの豊富さではSynologyやQNAPに大きく差をつけられています。「初期設定をとにかく簡単にしたい」「細かいカスタマイズは不要」という方に向いています。

モデル ベイ数 内蔵HDD LAN 価格目安
LS710D0401 1ベイ 4TB 2.5GbE 約24,800円
LS720D0402 2ベイ 4TB(2TB×2) 2.5GbE 約36,970円
LS720D0802 2ベイ 8TB(4TB×2) 2.5GbE 約52,000〜58,000円

 

ASUSTOR(アサスター):コスパ重視ならチェック

ASUSグループのNASブランドです。ハードウェアスペックの割にコスパが良く、ゲーミングデザインの「Nimbustor」シリーズが個性的。エントリーモデル「AS1102TL」は約18,000〜22,000円と最安クラスです。ただし日本での知名度やサポート体制はSynology・Buffaloに比べるとやや弱めです。

新興メーカー:UGREENとTerraMaster

UGREENは2025年にNAS市場に参入し、NASync DH2300(2ベイ、約27,940円)が価格競争力で注目されています。TerraMasterは金属筐体で放熱性に優れますが、OS「TOS」の完成度はまだ発展途上です。いずれも長期的な信頼性やソフトウェアのアップデート対応は未知数なので、初めてのNASには定番メーカーを選ぶのが安心でしょう。

本体選びの4つの判断基準

家庭で「あとで後悔しない」ためには、次の順番で検討すると破綻しにくいです。

  1. ベイ数:2ベイ(RAID 1中心)か、4ベイ以上(RAID 5/6/10が可能)か。ほとんどの家庭は2ベイで十分です。
  2. リモートアクセスの安全性:VPNやリレー型アクセス(QuickConnect等)に対応しているか。ログ・通知機能が充実しているか。
  3. エコシステム:スマホ写真の自動バックアップやPC同期など「毎日使う機能」がわかりやすく使えるか。
  4. 互換性:HDD/SSDの互換性リストが公開されているか。将来の交換・増設に対応できるか。

NAS用HDDの選び方:デスクトップ用との決定的な違い

なぜNAS専用HDDが必要なのか

「手元に余っているHDDを使えないの?」と思われるかもしれません。結論から言うと、NASにはNAS用HDDを使うのが断然おすすめです。デスクトップ用HDDとの主な違いは以下のとおりです。

項目 NAS用HDD デスクトップ用HDD
稼働想定 24時間365日連続運転 断続的使用(1日8〜10時間)
振動対策 RVセンサー搭載(上位モデル) なし
エラー処理 TLER対応(RAID環境でタイムアウト防止) なし(リビルド失敗リスク)
保証期間 3〜5年 2年
ワークロード 180〜550TB/年 非公表が多い

 

特に重要なのがTLER(Time-Limited Error Recovery)への対応です。デスクトップ用HDDはエラー発生時に長時間かけて自力復旧を試みますが、NAS用HDDはエラーを素早くRAIDコントローラーに委ねます。この違いがRAIDのリビルド成功率に大きく影響します。

主要NAS用HDD 3ブランド比較

WD Red Plus

CMR記録方式、5,400rpm、NASwareファームウェア搭載。最大8ベイ対応で3年保証。日本価格は4TBで約16,800〜18,800円、8TBで約27,700〜30,500円です。

注意:WD Red「無印」はSMR方式でRAID非推奨

WD Redには「無印」と「Plus」があり、無印はSMR(瓦記録方式)を採用しています。RAID環境ではパフォーマンス低下やリビルド失敗のリスクがあるため、必ずRed Plus以上を選んでください。WD公式サイトで型番ごとの記録方式を確認できます。

 

Seagate IronWolf

CMR記録、5,400〜7,200rpm。IronWolf Health Management(IHM)でSynology/QNAPのGUIからドライブの健康状態を監視できます。3年保証でRescueデータ復旧サービス付きモデルも。日本価格は4TBで約14,000〜17,000円、8TBで約27,000〜30,000円です。

東芝 N300

CMR記録で全容量7,200rpm(WD Red Plus/IronWolfより高速)。RVセンサー搭載。日本メーカーの安心感があり、特に10TB〜14TB帯でのコスパが優秀です。2台組パック(N302)もあります。

容量の選び方

8TBがコスパのスイートスポット(1TBあたり約3,000〜4,000円)です。2〜4TBは1TBあたりの単価が割高で、16TB以上は容量プレミアムで割高傾向にあります。購入時は現在のデータ量の3倍程度の余裕を見ることをおすすめします。RAID構成による実効容量の減少(例:4TB×2本のRAID 1=実効4TB)も忘れずに考慮してください。

RAIDの基礎と比較:データを守る仕組みを理解する

RAID(Redundant Array of Independent Disks)は、複数のHDDをまとめて「1つの保存領域」として扱い、性能や耐障害性を得る仕組みです。RAIDレベルによって「速いけれど壊れやすい」「遅くなるけれど壊れにくい」「容量効率が良いけれど計算負荷がある」など性格が変わります。

重要な前提:RAIDグループ内で容量が異なるディスクを混在させると、最小容量に揃って認識されます。4TBと8TBを混在させると8TBのディスクも4TB分しか使えません。また、HDD/SSD混在では遅い方に速度が合わせられます。

RAID比較表

RAID 最低台数 耐障害性 容量効率 家庭での推奨用途
RAID 0 2台 なし(1台故障で全データ消失) 100% 速度最優先の作業領域。「壊れたら終わり」
RAID 1 2台 1台の故障に耐える 50% 2ベイNASの定番。家族写真・書類に最適
RAID 5 3台 1台の故障に耐える (N-1)/N 4ベイ以上で容量・速度・保護のバランス型
RAID 6 4台 2台の同時故障に耐える (N-2)/N 重要データの安全策。大容量HDD構成で特に推奨
RAID 10 4台(偶数) ペアごとに1台の故障に耐える 50% 速度と耐障害性の両立。性能重視ユーザー向け

 

各RAIDレベルの詳しい解説

RAID 0(ストライピング)

データを複数ディスクに分散して書き込むため読み書き速度は最速ですが、冗長性はゼロです。1台が故障するだけで全データが消失します。4TB×2本で実効8TB。動画編集の作業用など「速度命、消えてもやり直せる」データ専用です。家庭のメインストレージとしては基本的に非推奨です。

RAID 1(ミラーリング)

2台のディスクに全く同じデータを同時に書き込みます。2ベイNASの定番構成で、1台が故障してもデータはもう1台に残ります。復旧もシンプル(故障ディスクを交換→自動コピー)。ただし容量効率は50%で、4TB×2本の構成でも実効容量は4TBです。

RAID 5(パリティ分散)

データと「パリティ」と呼ばれる誤り訂正情報を3台以上に分散配置します。容量効率と冗長性のバランスが最も良く、4ベイNASで人気の構成です。1台の故障に耐えられますが、リビルド中にもう1台が故障すると全データ消失という弱点があります。4TB×4本で実効12TB。

RAID 6(二重パリティ)

RAID 5のパリティを2組に増やした構成で、2台の同時故障に対応できます。大容量ディスク環境ではリビルドに長時間かかるため、RAID 5よりも安全性が高く、地震リスクの高い日本では特に検討価値があります。最低4台必要で、4TB×4本で実効8TB。

RAID 10(1+0)

RAID 1のペアを作り、それをRAID 0で束ねる方式です。速度と耐障害性を両立できますが、容量効率は50%。最低4台(偶数)必要で、データベースなどランダムアクセス性能が求められる用途に強いです。

SHR(Synology Hybrid RAID):初心者に特におすすめ

SHRはSynology NAS専用の独自RAIDで、2台構成ではRAID 1相当、3台以上ではRAID 5相当で動作します。最大の特徴は異なる容量のHDDを組み合わせた場合でも容量を最大限効率的に活用できる点です。

例えば、4ベイNASで4TB/4TB/2TB/1TBという構成の場合、通常のRAID 5では最小の1TBに合わせて実効3TBになりますが、SHRでは空間を効率的に分割して約5.4TB以上を確保できます。将来のHDD交換・増設にも柔軟に対応でき、1本ずつ大容量に交換していくことが可能です。

SHR-1は1台の故障に対応(RAID 5相当)、SHR-2は2台の同時故障に対応(RAID 6相当)。Synology NASの初期設定ではデフォルトでSHRが選択されるため、初心者の方は「迷ったらSHRを選んでおけば間違いない」と覚えておいてください。

失敗しないRAID選び:判断フローチャート

家庭でRAID選びに失敗するパターンはだいたい3つです。「ベイ数不足(2ベイでRAID 5をやりたい等)」「容量違いディスク混在で損」「RAIDをバックアップ代わりにしてしまう」。以下のフローチャートで、ご自身に合ったRAIDを見つけてください。

【ベイ数が1台の場合】

→ 単一ディスク運用。RAIDは不可。バックアップの強化が必須です。

【ベイ数が2台の場合】

→ 消えたら困るデータが中心なら「RAID 1」が堅実。速度最優先なら「RAID 0」ですが、バックアップが必須。SynologyユーザーはSHRを選択。

【ベイ数が3台の場合】

→ 選択肢は実質RAID 5が中心。重要度が高いなら4台以上への拡張も検討。

【ベイ数が4台以上の場合】

→ 容量とコストのバランスなら「RAID 5」、耐障害性を優先するなら「RAID 6」、速度と耐障害性の両立なら「RAID 10」。迷ったらRAID 6寄りで検討してください。

家庭向けケース別のおすすめ

写真・動画・書類を集約したい:2ベイ+RAID 1(またはSHR)か、4ベイ+RAID 5/6が現実解。スマホ写真の自動バックアップも対応。

動画編集の作業領域が必要:RAID 0が速度面では有力ですが、障害保護がありません。「RAID 0=作業用」「完成品は別の場所へバックアップ」と分けるのが安全です。

仕事の重要データを置きたい:RAID 6(2台故障耐性)が最も安心。加えてオフサイトバックアップも必須です。

初期設定のステップバイステップ

ここからは、購入したNASを「安全に」「あとで困らない形で」立ち上げるための手順を解説します。メーカーによって画面や用語は異なりますが、基本的な流れはほぼ共通です。

ステップ1:準備段階

新品ディスクでも、初期化(フォーマット)により中身は消えます。すでにデータが入っているHDDを流用する場合は、必ず事前にデータを退避してください。また、ドライブの互換性リストを各メーカーの公式サイトで確認しておくのも大切です。

ステップ2:箱開けから設置まで

NASにドライブを取り付け、LANケーブルと電源を接続します。Synologyの多くのモデルはツールレス設計で、ドライブトレイを引き出してHDDを載せ、側面クリップで固定するだけです。

初期設定中は有線LAN接続を推奨します。Wi-Fiだと途中で切断され、セットアップがやり直しになるリスクがあります。

注意:電源操作は慎重に

アクセスランプ点滅中にコンセントを抜く、リビルド中に電源を切るといった操作は、故障やデータ損失のリスクを高めます。必ずOSの管理画面から正しくシャットダウンしてください。

 

ステップ3:管理画面へのログイン

PCのブラウザから管理画面(Web UI)にアクセスします。メーカーごとの代表的な方法は以下のとおりです。

Synology:ブラウザで http://find.synology.com にアクセスすると、同一ネットワーク内のNASを自動検出します。

QNAP:PC用ユーティリティ「Qfinder Pro」をインストールし、LAN上のデバイス一覧からWebポータルを開きます。

Buffalo/I-O DATA:各メーカーの専用ツール(NAS Navigator、LAN DISK CONNECTなど)から設定画面を開きます。

最初にやるべきは「管理者パスワードの設定」と「初期ユーザーの設計」です。ここで必ず強力なパスワード(12文字以上、英大文字・小文字・数字・特殊記号の組み合わせ)を設定してください。

ステップ4:ファームウェア更新

初回セットアップ完了後、真っ先にファームウェア(OS)の更新を確認します。過去のランサムウェア被害事例でも、「OSおよびアプリを最新に保つ」ことが推奨行動として挙げられています。

ただし、更新は「戻せない/戻しにくい」場合があります。Synologyの場合、DSMは最新版にアップデートすると旧バージョンには戻せないため、バックアップ完了後のアップデートが推奨されています。

ステップ5:ストレージプール作成とRAID構成

NASが「保存先として使える状態」になるには、RAIDでストレージプール/ボリュームを作る必要があります。

Synologyの場合:「ストレージマネージャ」からストレージプールとボリュームを作成。RAIDタイプ選択でSHR(推奨)、RAID 1、RAID 0等を選びます。ファイルシステムはBtrfs推奨(スナップショットやクォータに対応)。

QNAPの場合:「ストレージ&スナップショット」からRAIDタイプを選択→ボリューム→共有フォルダ作成という流れです。

ステップ6:ユーザー・共有フォルダ・アクセス権

家庭でも、共有フォルダを「家族共有」「子ども用」「バックアップ専用」など目的別に分けると事故が減ります。アクセス権は後回しにしがちですが、運用の要になる部分です。

管理者アカウント:設定変更専用に使い、普段のファイル操作には使わない。

家族ユーザー:必要な共有フォルダだけ「読み書き」を付与し、不要なフォルダにはアクセス不可に設定。

SMBサービスを有効にすれば、WindowsのエクスプローラーやmacOSのFinderから通常のフォルダと同じようにアクセスできます。

ステップ7:リモートアクセス設定

外出先からNASにアクセスできるのは非常に便利ですが、ここが最大のセキュリティ事故ポイントです。「NASをインターネットに直接晒さない」を鉄則にしてください。

メーカーが用意する「安全寄り」の選択肢は以下のとおりです。

VPN(最も安全):NASをインターネットに直接公開せず、VPN経由でのみアクセスする方法。最も安全ですが設定がやや難しい。

リレー型アクセス(次に安全):Synology QuickConnect、QNAP myQNAPcloud Link など。メーカーの中継サーバー経由で暗号化接続するため、ルーターのポート転送設定が不要。

ポート開放(最もリスクが高い):ルーターの80/443番や、NASのデフォルトポート(5000/5001番など)を直接開放する方法。ランサムウェアの侵入経路になりやすいため、可能な限り避けてください。

ステップ8:スマホ連携

スマホ連携は「写真の自動バックアップ」「ファイル閲覧」「通知(プッシュ)」の3つに分けると理解しやすいです。各メーカーが専用アプリを用意しています。

Synology:Synology Photos(写真自動バックアップ+AI顔認識)、DS file(ファイル管理)

QNAP:Qfile Pro(ファイルアクセス+写真バックアップ)、QuMagie(AI写真管理)

Buffalo:WebAccess Aアプリでリモートアクセス

I-O DATA:Remote Link Filesアプリ(QR/PINで端末登録)

ステップ9:通知設定

ディスク故障や異常を見逃さないために、メール通知やプッシュ通知を必ず設定し、テスト送信まで確認してください。「設定したつもり」で実は通知が飛んでいなかった、というのはよくある失敗です。

なお、Outlook/Exchange Onlineの基本認証廃止に伴い、メール通知にOAuth2切替が必要になるケースもあります。ファームウェア更新情報は定期的にチェックしましょう。

セキュリティ設定:NASを守る多層防御の実践

基本設定5つの鉄則

① adminアカウントの無効化:多くのブルートフォース攻撃は「admin」というユーザー名を前提にしています。別名の管理者アカウントを作成し、adminは無効にするだけで攻撃成功率を大幅に下げられます。

② 強力なパスワードの設定:12文字以上で英大文字・小文字・数字・特殊記号を組み合わせましょう。DSMではパスワードポリシーで複雑さを強制できます。

③ 2段階認証(2FA)の有効化:管理者グループへの2FA強制適用を強く推奨します。回復用コードは必ず別途保管してください。

④ ファイアウォール+GeoIP制限:Synology DSMではローカルLAN許可→必要なポートのみ許可→日本からのアクセスのみ許可→その他すべて拒否、の順でルール設定が可能です。GeoIP制限だけで攻撃頻度が激減したという報告もあります。

⑤ 自動ブロックの有効化:一定回数ログインに失敗したIPを自動でブロックする設定です。DoS防御機能も併せて有効化しましょう。

その他の重要なセキュリティ対策

HTTPS強制とLet’s Encrypt証明書:無料SSL証明書を自動取得・更新でき、通信を暗号化できます。デフォルトポート(5000/5001)は必ず変更してください。

UPnPの無効化:NAS側・ルーター側の両方で無効にしましょう。過去のランサムウェア感染経路の一つがUPnP経由のポート自動開放でした。

スナップショット機能の活用:Btrfsファイルシステムで最短5分間隔のスナップショットが取得可能。「イミュータブルスナップショット」は管理者権限でも削除・変更不可で、ランサムウェア対策として非常に有効です。

過去のセキュリティインシデントから学ぶ教訓

NASを狙ったランサムウェアの実例を知っておくことで、セキュリティ設定の必要性を実感できます。

Deadbolt(2022年):QNAPとASUSTORのNASを標的にした攻撃。UPnPやポート開放で直接インターネットに公開されたNASに侵入し、ファイルを暗号化してビットコインで身代金を要求しました。

eCh0raix(2019年〜):当初QNAP、後にSynologyも標的に。脆弱性やブルートフォース攻撃でadmin認証を突破。

Qlocker(2021年):QNAP NASの脆弱性を悪用し、ファイルをパスワード付き7-Zipアーカイブに圧縮。わずか5日間で約260,000ドルの身代金を獲得しました。

共通する教訓:NASをインターネットに直接公開しない。ファームウェアは即時更新。デフォルト設定で使わない。スナップショット+外部バックアップは命綱。多層防御(2FA+ファイアウォール+自動ブロック+GeoIP+VPN)を組み合わせる。

バックアップ運用:RAIDとバックアップの決定的な違い

最重要ポイント:RAIDはバックアップではありません

RAIDは「ディスクが壊れたときに止まりにくくする」冗長性の仕組みです。バックアップは「消した・壊れた・暗号化された・燃えた・盗まれたデータを戻す」ための仕組みです。この2つは根本的に異なります。RAIDだけに頼ると、誤削除・ランサムウェア・NAS本体の故障・火災には対応できません。

 

3-2-1ルールの実践例

3-2-1ルールは、データ保護のゴールドスタンダードです。3つのコピーを、2種類の異なるメディアに保存し、1つはオフサイト(自宅外)に置く考え方です。

家庭での具体的な実践例:

コピー1:PC/スマホ上のオリジナルデータ

コピー2:NAS(RAID 1/SHR構成)に自動バックアップ

コピー3:外付けHDD(NASのUSBポートに接続)またはクラウドストレージ(オフサイト)

運用サイクルの目安:

毎日:PC/スマホ → NAS(自動同期)

毎週:NAS → 外付けHDD(世代管理あり)

毎月:NAS → クラウド or 遠隔地(重要フォルダだけでも)

こうすることで、誤削除、ランサムウェア、機器故障、災害のリスクを幅広くカバーできます。Synologyの場合は「Hyper Backup」アプリで外付けHDDやクラウド(Synology C2、Amazon Glacierなど)への自動バックアップを簡単にスケジュールできます。

近年のランサムウェア対策として「3-2-1-1-0ルール」も注目されています。追加の「1」はイミュータブル(変更不可)またはエアギャップ(ネットワーク非接続)のバックアップ、「0」はバックアップのエラーがゼロであることの検証を意味します。

注意:スナップショットは万能ではない

QNAPの事例では、ランサムウェアが不正に管理者権限を取得し、スナップショット削除コマンドを実行したため保護が機能しなかったケースが報告されています。NAS内の保護機能だけに頼らず、外部バックアップとの併用が不可欠です。

 

家庭用NASの活用シーン7選

  1. 写真・動画の自動バックアップ

Synology PhotosやQNAP QuMagieを使えば、スマホで撮影した写真が自動的にNASにバックアップされます。Google Photosの有料化以降、NASへの移行が加速しています。AI顔認識やタイムライン表示にも対応しており、家族の思い出を一箇所に集約できます。

  1. メディアサーバー

DLNA対応テレビからNAS上の動画・音楽・写真を直接再生できます。Plex Media Serverを導入すれば、Fire TV StickやChromecastなどあらゆるデバイスへの最適化配信も可能。QNAPのHDMI出力モデルならテレビに直接繋いで4K再生もできます。BuffaloのDTCP-IP対応は地デジ録画番組の視聴という日本独自の用途をカバーします。

  1. Time Machineバックアップ(Mac)

NASにTime Machine用の共有フォルダを作成すれば、Mac全体のバックアップ先として利用できます。クォータ設定でMacの2〜3倍の容量に制限するのがおすすめです。

  1. PCのバックアップ

Synology Active Backup for Business(無料)でWindows PCのシステム全体をバックアップできます。Synology Drive Clientを使えばPC⇔NASのファイル同期も可能で、最大32バージョンの履歴管理に対応しています。

  1. リモートアクセス

QuickConnectやmyQNAPcloudを使えば、ルーターの設定変更なしに外出先からNASのファイルにアクセスできます。スマホアプリで写真の確認や書類の閲覧が可能です。

  1. 監視カメラ録画

Synology Surveillance Stationで対応IPカメラの映像をNASに録画・管理できます。無料ライセンス2台分が付属し、クラウド接続不要で安価なIPカメラもNAS内で安全に管理できます。

  1. Docker/仮想マシン(上級者向け)

Container Manager(Synology)やContainer Station(QNAP)で、Home AssistantやPi-holeなどをNAS上で運用できます。CPUやメモリに余裕のあるPlusシリーズ以上が推奨です。

よくある失敗例と注意点:初心者が陥りやすい8つのトラップ

①RAID 0を選んでデータ喪失:RAID 1対応機器でもデフォルトがRAID 0のケースがあります。導入時にRAID構成を必ず確認してください。

②「RAIDがあるからバックアップ不要」の誤解:業界全体で繰り返し警告されている最重要ポイントです。RAIDはNAS本体の故障、火災、ランサムウェア、誤削除には対応できません。

③デスクトップ用HDDの流用:24時間稼働の耐久性やTLER対応がないデスクトップ用HDDでは、数ヶ月でトラブルになるケースも。NAS用HDDへの投資は必須です。

④同じロットのHDDを複数使用:同時期に製造されたHDDは近い時期に寿命を迎え、リビルド中にもう1台も故障する最悪のシナリオが起こりえます。製造時期を分散させるか、異なる販売店で購入して混在させることをおすすめします。

⑤セキュリティ設定の放置:デフォルトパスワード、admin有効のまま、ポート開放で放置は重大なリスクです。導入直後に各種セキュリティ設定を実施しましょう。

⑥UPS(無停電電源装置)なしでの運用:停電・瞬断でデータ書き込み中のHDDにダメージが及び、RAID崩壊の原因になります。NASとUSBケーブルで接続すれば、停電検知時に自動シャットダウンが可能です。OMRON BW55TやAPC BEシリーズなどが家庭用の定番です。

⑦設置場所の問題:HDDの推奨動作温度は30〜40℃。直射日光や家電の排熱が当たる場所は避けてください。冷却ファンとHDD動作音があるため寝室は避け、書斎やクローゼット(通気確保)が推奨です。

⑧容量不足への無計画:RAID構成による実効容量の減少を考慮せず購入してしまうパターンです。4TB×2本のRAID 1は実効4TBしかありません。現在のデータ量の3倍程度の余裕を見ましょう。

予算別おすすめ構成【2025年版】

〜3万円:手軽に始めるなら

Buffalo LS710D0401(4TB内蔵、約24,800円)がおすすめです。HDD込みですぐ使え、セットアップも最も簡単。拡張性は限られますが、初めてのNAS体験には最適です。

5万円台:コスパ最優先

Buffalo LS720D0402(4TB×2内蔵、2.5GbE、約36,970円)ならRAID 1対応で即使えます。または、Synology DS223j(約30,800円)にWD Red Plus/IronWolf 4TBを1本(約17,000円)追加して約48,000円でスタートし、後からもう1本追加してRAID 1に移行する方法もあります。

6〜7万円台:最もバランスの良い構成(初心者ベストバイ)

Synology DS223j(約30,800円)+ IronWolf/WD Red Plus 4TB×2本(約30,000〜36,000円)= 合計約62,000〜68,000円。RAID 1/SHR構成で実効4TB。多くの家庭にとってこれがベストバイです。DSMのアプリエコシステム(写真管理、PC同期、バックアップ)がフル活用でき、将来のHDD大容量化にも対応できます。

10万円前後:Plusシリーズで多機能に

Synology DS225+(約56,500円)+ HAT3300 4TB×2本(約49,000円)= 約105,000円。Intel CPU搭載でPlexトランスコード、AI顔認識(Synology Photos)、Docker対応など機能が大幅に拡大します。2.5GbEポートで高速転送にも対応。

QNAP TS-462(約65,000円)+ IronWolf 4TB×2本(約30,000円)= 約95,000円も有力。4ベイでRAID 5が可能になり、HDMI出力でテレビ直接4K再生もできます。

13万円以上:将来性重視の高性能構成

Synology DS925+(約103,500円)+ 8TB×4本で大容量RAID 5/SHR構成。動画編集やサーバー用途にも対応できるパワフルな構成です。

ポイント:バックアップ先のコストも忘れずに

NAS本体+HDDの予算だけでなく、3-2-1ルール実践のための外付けHDD(4TB:約12,000〜15,000円程度)やUPS(約10,000〜20,000円)のコストも計画に含めましょう。バックアップまで含めて初めて「失敗しない設計」になります。

 

トラブルシューティング

ディスク故障時の基本対応

まずやることは「通知を見て状況確認→イベントログ確認→バックアップ可否の確認」です。RAID 1/5/6/10など冗長性があるRAIDでは、故障ディスクを交換すると再構築(リビルド)が自動で始まります。

警告:リビルド中は絶対に電源を切らないでください

リビルド中の電源断はデータ消失に直結する致命的な操作です。リビルド中は性能が低下し、完了までに数時間〜数十時間かかることもありますが、終わるまで必ず待ちましょう。交換用ディスクは各メーカーの互換性リストに載っている対応品を使ってください。

 

トラブル対応チェックリスト

症状 まず確認 典型的な対応 注意
ディスク警告/故障 通知→イベントログ ディスク交換→リビルド(状態確認) リビルド中は電源OFFしない
リビルドが始まらない 新ディスクの検出/状態 スペア設定で開始 非対応ディスクに注意
外出先アクセス不可 ルーター/VPN/HTTPS設定 リレー/VPN優先で設定見直し 安易なポート開放は危険
通知が来ない SMTP/OAuth2/認証方式 ファーム更新、認証方式変更 基本認証廃止に注意

 

初期設定チェックリスト

最後に、初期設定の全工程をチェックリストにまとめました。上から順に進めていけば、安全で使いやすいNAS環境が完成します。

フェーズ やること 失敗しがちな点
事前準備 既存ディスクのデータ退避、互換性リスト確認、必要ベイ数の確認 「あとで移せばいい」で初期化→データ消失
設置 ドライブ装着、LAN/電源接続、安定した設置場所の確保 Wi-Fi運用で初回設定中に切断
管理画面 管理者パスワード設定(12文字以上)、タイムゾーン/名称設定 adminを普段使いする
更新 ファームウェア更新確認、自動更新/通知の有効化 更新前にバックアップを取らない
保存先 RAID/ボリューム作成、SHR/RAID 1推奨、Btrfs選択 容量違い混在で損する
共有設定 共有フォルダ設計、ユーザー作成、アクセス権の設定 全員フル権限で運用
セキュリティ admin無効化、2FA有効化、ファイアウォール、自動ブロック デフォルト設定のまま放置
リモート VPN/リレー型を優先、ポート開放は最終手段 80/443やデフォルトポートを安易に開放
スマホ 写真自動バックアップ設定、アプリ連携 端末認証/権限設定を曖昧にする
通知 メール/プッシュ通知設定+テスト送信で動作確認 通知が飛ばず故障に気づけない
バックアップ 3-2-1ルールの実践(外付けHDD+クラウド) RAIDだけでバックアップを省略

 

用語集

NAS(Network Attached Storage):ネットワークに接続し、複数端末からデータを共有・利用できるストレージ。

RAID(Redundant Array of Independent Disks):複数ディスクで性能や冗長性を得る仕組み。レベルにより容量効率・耐障害性が異なる。

SHR(Synology Hybrid RAID):Synology独自のRAID。異なる容量のHDDを効率的に活用でき、初心者にも扱いやすい。

リビルド(再構築):故障ディスク交換後に冗長性を回復する処理。進捗確認と電源断禁止が重要。

TLER(Time-Limited Error Recovery):NAS用HDDに搭載されるエラー処理機能。RAID環境でのリビルド失敗を防ぐ。

CMR/SMR:HDDの記録方式。CMR(従来型磁気記録)はRAID向け、SMR(瓦記録方式)はRAIDでの使用が推奨されない場合が多い。

Btrfs:スナップショットやデータ整合性チェックに対応した先進的なファイルシステム。Synology NASで推奨。

UPnP(Universal Plug and Play):ルーターが自動でポート開放を行う仕組み。セキュリティリスクがあるためNAS環境では無効化推奨。

3-2-1ルール:コピー3つ、媒体2種類、オフサイト1つのバックアップ原則。データ保護のゴールドスタンダード。

UPS(Uninterruptible Power Supply):無停電電源装置。停電時にNASを安全にシャットダウンさせ、データ損失を防ぐ。

まとめ

NASは正しく選んで正しく設定すれば、初心者でも「自分だけのプライベートクラウド」を安全に運用できます。最後にこの記事のポイントを振り返りましょう。

NAS本体の選び方:初めての方にはSynology DS223j(約30,800円)が最もバランスが良く、DSMの使いやすさとアプリの豊富さが光ります。設定不要で使いたい方にはBuffaloのHDD内蔵モデルがおすすめ。

HDDの選び方:必ずNAS用HDDを選んでください。WD Red Plus、Seagate IronWolf、東芝N300が3大定番。8TBがコスパのスイートスポットです。

RAID選び:2ベイならRAID 1(SynologyユーザーはSHR)、4ベイ以上ならRAID 5/6。「迷ったらSHR」が初心者の合言葉です。

最重要ルール:RAIDはバックアップではありません。3-2-1ルールで外付けHDD+クラウドへのバックアップを必ず設計しましょう。

セキュリティ:admin無効化、2FA有効化、ファイアウォール設定、VPN/リレー型アクセスの優先。「NASをインターネットに直接晒さない」が鉄則です。

この記事が、あなたの安全で快適なNASライフの第一歩になれば幸いです。

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