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5GHz Wi-Fiが2.4GHzより遅いと感じるときの原因と対処法

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1. 5GHz帯が「速いはずなのに遅い」現象とは

自宅のWi-Fiで「本来高速なはずの5GHzに繋いだのに、なぜか2.4GHzより遅い…」という経験はないでしょうか。Wi-Fiには主に2.4GHz帯(遠くまで届きやすい)と5GHz帯(高速だが障害物に弱い)の2つの周波数帯域があり、それぞれ特性が異なります。この違いを理解せず使っていると、「速いはずの5GHzが遅い」「2.4GHzしか繋がらない」といったトラブルに陥りがちです。

5GHz帯は理論上は高速通信が可能で電波干渉も受けにくいメリットがあります。しかし、使用環境によっては通信速度が2.4GHzよりも低下する現象が起こり得ます。本記事では、この「5GHzのほうが遅く感じる」現象の原因を技術的背景からひも解き、初心者にも分かるよう丁寧に説明します。また、実際の計測データや再現結果を示しつつ、考えられる対策を網羅します。専門的な数値データや理論的根拠も示すので、中級者以上の方にも信頼いただける内容となっています。

以下の構成で、問題の理解と解決策を順を追って見ていきましょう。

2. 物理的・電波特性的な技術的背景(波長、FSPL、減衰特性など)

なぜ5GHzは速いはずなのに遅くなり得るのか? 根本には電波の物理特性があります。まず周波数による波長の違いです。一般に周波数が低いほど波長が長くなり、高いほど波長が短くなります。2.4GHz帯の波長は約12.5cm、5GHz帯では約5~6cm程度と5GHzの方が波長が短いため、障害物を回り込む力が弱く減衰しやすいのです。そのため、5GHz帯は壁やドアなどの遮蔽物が多い環境では電波が届きにくいという性質があります。一方、2.4GHz帯は波長が長く障害物に強いため、壁越しや遠距離でも電波が届きやすく広範囲をカバーできます。

加えて、電波が空間を伝搬するときの減衰量(自由空間伝搬損失: Free Space Path Loss, FSPL)も周波数に依存します。理論上は周波数が倍になるとFSPLは約6dB増加し、同じ距離でも高周波ほど信号強度が弱くなります。例えば5GHzと2.4GHzでは5GHzのほうが数dB多く減衰するため、同じ出力・距離でも5GHzの受信信号は2.4GHzより弱くなりがちです。この傾向は壁などの障害物があるとさらに顕著になります。実際、厚いコンクリート壁一枚では、2.4GHzで約23dBの減衰でも5GHzでは約45dBもの減衰になるとの測定例があります。下表は材質ごとの代表的な減衰量比較です。

材質(壁の種類など) 減衰量 (2.4GHz) 減衰量 (5GHz)
重量コンクリート 約22.8 dB 約44.8 dB
石灰レンガ 約4.3 dB 約7.8 dB
石膏ボード間仕切り 約5.4 dB 約10.1 dB
チップボード(合板) 約0.46 dB 約0.84 dB

表1: 周波数帯による材質別の電波減衰の一例(厚みにより異なる)。5GHzは高周波ゆえに2.4GHzよりも障害物で大きく減衰する傾向がある。

ご覧のように、特に重い材質(コンクリート等)は5GHzでの損失増加が顕著です。2.4GHzでわずか数dBの減衰しかない素材でも、5GHzでは倍近い減衰になるケースがあります。このように物理的特性として5GHzは距離が離れたり障害物が増えたりすると急激に電波強度が落ちるため、結果としてスループット(実効速度)が低下し、「5GHzが遅い」と感じる状況が生まれます。

一方、電波干渉の観点では5GHz帯に利点があります。2.4GHz帯はWi-Fi以外にも電子レンジやBluetooth機器など様々な機器で使われており、同じ周波数帯の電波同士が影響し合って混信・干渉が起きやすいです。さらにチャンネルも3つ程度しか実質的に非干渉で使えないため、都市部やマンションでは近隣のWi-Fiが混雑しやすい傾向があります。これに対し5GHz帯はWi-Fi専用の帯域で、利用できるチャンネル数も多く隣接チャネル干渉が起きにくいです。また家庭用家電によるノイズ源も少ないため、電波干渉が少なく通信が安定しやすいというメリットがあります。つまり「5GHzは近距離なら高速で安定、遠距離や遮蔽下では急激に弱くなる」という性質だといえます。

3. DFS・チャネル幅・混雑など5GHz特有の要因

上記の物理特性に加え、5GHz帯にはDFS (Dynamic Frequency Selection)やチャネル幅といった要因も関係します。DFSとは気象レーダーや航空レーダーと周波数を共有する5GHzチャネルで義務付けられた機能で、レーダー波を検出するとWi-Fi側の通信を一時停止・チャネル変更する仕組みです。日本では5GHz帯のうちW53(52~64ch)とW56(100~140ch)がレーダー利用帯域に該当し、DFS動作の対象になります。そのため、例えば屋外や高層階付近でこれらチャネルを使用中にレーダー波を検知すると、ルーターは通信を止めて別チャネルへ切り替えるため、一時的にWi-Fiが切断されることがあります。家庭内利用でも、DFS対応チャネルを使っているとごくまれにこのDFS動作(突然の通信中断)に遭遇し、「5GHzが安定しない」「繋がっているのに通信できない」と感じる原因となりえます。

そこでDFSが原因と考えられる場合は、DFS不要なチャネル帯域(W52の36~48ch)に固定するのが有効な対処法です。実際、5GHz対応機器で通信障害が起きる場合、レーダー波利用のW53/W56を避けてW52のみを使う設定にすると改善するケースがあります。ただし注意点として、W52帯は屋内利用限定ながら多くの家庭で使われるため利用者が集中し混雑するリスクもあります。このため「DFSによる不意の遮断を避けるか、混雑の少なさを取るか」は環境によって判断が必要です。後述する対策でも触れますが、まず安定性重視ならW52固定、速度重視ならDFS帯も含め自動選択、といった使い分けも一つの方策です。

次にチャネル幅(帯域幅)についてです。Wi-Fiでは20MHzを基本に、2つのチャネルを束ねて40MHz、さらには4チャネル束ねて80MHz、Wi-Fi6以降では最大160MHz幅まで利用できます。チャネル幅が広いほど一度に送れるデータ量(帯域)が増えるため理論上の最大速度は向上しますが、その反面、必要な信号強度(SNR)も高くなり距離や障害物にシビアになります。また広帯域になると他の電波との干渉を受けやすくなる場合もあります。そのため、例えば電波の届きにくい場所では敢えてチャネル幅を狭く(20/40MHzに)設定し直すことで安定するケースもあります。実際にTP-Link社は、特定端末が5GHzに接続できない場合の対策として「チャネルを36~48のいずれか、チャネル幅は自動または40MHzに設定」することを公式に案内しています。これはDFS帯や160MHz幅を避け、機器との互換性や安定性を高める目的があります。

また利用環境の混雑も考慮しましょう。前述の通り2.4GHz帯は混信しやすいですが、5GHz帯でも周囲に多数のWi-Fiアクセスポイントがあれば、使用チャネルが重複して干渉(インターフェースの取り合いによるスループット低下)が起きます。ただ5GHzは非重複チャネル数が多く、各APが異なるチャネルを使えば負荷分散が可能です。自宅近隣のWi-Fi状況をスキャンして、もし同じチャネルを使う5GHzネットワークが多ければ、ルーターのチャネルを変更することで速度改善する場合があります。現行ルーターは通常自動チャネル選択機能で最適チャネルを選びますが、環境によっては手動で干渉の少ないチャネルに固定したほうが安定することもあります。

要約すると、5GHz帯が遅く感じる背景には:

  • 電波減衰の大きさ: 高周波ゆえ壁越し・遠距離で急激に信号低下する

  • DFS動作: レーダー回避機能による一時停止・チャネル変更が発生する

  • チャネル幅: 広すぎる帯域設定(80/160MHz)は要強信号で環境によっては不安定

  • 周囲のWi-Fi干渉: W52帯域の利用集中や近隣APとのチャネル競合

といった要因が複合しています。次章では、実際の計測データからこうした現象を検証します。

4. 実測データと速度逆転の再現性

理論だけでなく、本当に5GHzが2.4GHzより遅くなる場面がどの程度あるのか、実測したデータを見てみましょう。ある木造2階建て住宅で、同じルーター・端末を用い家屋内の各地点でWi-Fi速度を計測した例があります。下のグラフは、同一宅内で部屋の隔たり(壁の数)を変えたときの2.4GHzと5GHzそれぞれのスループットを比較したものです。

ご覧のように、ルーターと同じ部屋では5GHz帯が約160Mbpsと高速で2.4GHz帯(約140Mbps)を上回っています。壁1枚隔てた隣室でも5GHzは約76Mbpsで、2.4GHzの83Mbpsと同程度まで健闘しています。しかし壁2枚隔てた場所では5GHzがわずか数Mbps程度まで急落し、逆に2.4GHzは約40~50Mbpsを維持しました。さらに隔壁と階をまたいだような厳しい位置では、5GHzは通信不能になるケースすらあったのに対し2.4GHzはわずかながら通信できています。

この結果は、前述した障害物に対する5GHzの弱さを裏付ける生々しいデータです。壁が増えるごとに5GHzのスループットは極端に低下し、2部屋隔てる(壁2枚)だけで10Mbps以下に落ち込んでしまいました。一方で2.4GHzは同じ場所でも数十Mbpsを維持し、5GHzより高速になっています。つまり離れた場所では「5GHzより2.4GHzの方が速い」逆転現象が実際に起きるわけです。

しかし一方で、近距離や見通しの良い場所では5GHzの方が高速で安定しています。上記測定でも、同じ部屋や隣室レベルであれば5GHzは常に2.4GHzと同等以上の速度を出しており、通信も安定傾向でした。興味深いのは、2.4GHz帯の方が速度のばらつき(不安定さ)が大きかった点です。これは周囲の電波干渉などの影響で2.4GHzの速度が測定ごとに揺らぎやすかったことを示唆します。一方5GHzは届く範囲内では安定して高スループットを維持できています。このことからも、「距離が近く電波が十分届く範囲なら5GHzが速く安定、範囲ギリギリでは2.4GHzが細々と繋がる」という両者の使い分けの必要性が見て取れます。

以上のように、「5GHzが遅い」と感じる現象は決して特異なケースではなく、住宅環境によっては容易に発生し得ます。ただしそれは5GHz帯自体の性能が低いわけではなく、環境条件次第でメリットとデメリットが逆転するためです。次章からは、こうした状況を改善するための具体的な対処法を紹介します。

5. 5GHzが遅いと感じる場合の対処法:設置・設定の見直し

問題の理解が深まったところで、実際に5GHz Wi-Fiの速度・安定性を改善する方法を整理します。対策は大きく分けて、「物理的な環境改善」「ルーター設定の最適化」「端末側の設定確認」「機器の更新」の段階があります。基本的には影響度の大きいものから優先的に対処するのが効率的です。以下では効果の高い対策順に解説します。

● ルーターの設置場所を見直す

まず最も基本かつ効果的なのは、Wi-Fiルーターの置き場所を最適化することです。電波の届きにくい場所にルーターがあると、5GHz帯は特に影響を受けます。理想的には「部屋(住居)の中央」「できるだけ高い位置」「見通しの良い開けた場所」に設置するのが望ましいです。逆に部屋の隅・床に直置き・箱や棚の中といった配置では、壁や家具で電波が遮られ性能を発揮できません。

またアンテナ搭載型のルーターなら、アンテナの向きを調整してみるのも手です。一般に垂直アンテナは水平方向に電波を飛ばすので、戸建て2階建てで1階と2階をカバーしたい場合はアンテナをやや水平気味に開くなどすると上下階への電波到達が改善する場合があります。内蔵アンテナ型でもルーター自体の向きや高さを変えることで指向性が変わり、死角が減ることがあります。まずは家の中で電波が弱い場所を把握し、それをカバーする位置にルーターを再配置することを検討しましょう。

● 周辺の干渉要因を取り除く

次に電波干渉の要因を減らすことも重要です。2.4GHzの場合は電子レンジ使用中に速度が落ちるといった例もあるように、周囲の家電(電子レンジ、コードレス電話、Bluetooth機器など)が発するノイズの影響を受けやすいです。ルーターの近くでこうした機器を使っていないか確認し、可能であれば距離を離すか使用チャンネルを変えるなどしましょう。また5GHzの場合、他のWi-Fiからの干渉は少ないとはいえマンションなどでは完全ではありません。隣近所で同じようなチャネルを使っている場合もあるので、ルーターのチャンネルを変えてみることも試す価値があります。2.4GHz帯なら1,6,11chのいずれかに固定、5GHz帯でも例えば36ch固定などにすると干渉が減るケースがあります。自宅近辺に飛んでいるWi-FiのSSID一覧(スマホやPCで確認)を見て、同じチャンネルが多いようなら別のチャネルへ変更してみましょう。チャネル変更の方法はメーカー毎のルーター設定画面で行います(詳細は後述「主要ルーターメーカー別設定ガイド」参照)。

● 5GHzのチャネル設定・DFS回避の工夫

前章で述べたDFSの問題を回避する設定も有効な対策です。具体的には、ルーターの5GHz設定でチャネルを「W52 (36/40/44/48)」内に固定し、それ以上のチャネルを使わないようにすることです。こうすることで気象レーダー等との干渉による通信断を防げます。多くの国内ルーターでは初期設定でW52優先または自動になっていますが、念のため手動で36chあたりに固定してみると良いでしょう。もしルーターに「DFSチャネルを含める/含めない」等の設定項目がある場合は、「DFS含めない」に設定することで自動的にDFS帯を避けてくれます。たとえばASUS製ルーターでは設定画面の無線項目で「160MHz有効化」と「DFSを含むチャネル自動選択」をオフにするとDFSによる切断問題を回避できると説明されています。お使いの機種でも類似の設定がないか確認してみましょう。

加えて、チャネル幅の見直しも検討してください。もしルーター側で5GHzのチャネル帯域を160MHzや80MHzに設定している場合、これを40MHzや20MHzに落としてみる価値があります。広帯域モードは高速化の代わりに電波が届く範囲が狭まる傾向があるため、電波がギリギリ届くかどうかの場所ではあえて帯域幅を狭め安定性を優先するのも手です。実際に「遠くの端末でも5GHzに繋がるが速度が安定しない」といった場合、40MHz幅に固定するとスループット自体は多少下がっても安定したという報告もあります。TP-LinkルーターのFAQでも、接続問題時の対処として「チャネル幅40MHzへの変更」が挙げられています。最大速度より実効的な安定通信を取る判断です。

● 端末側の設定・ドライバを確認

ルーターだけでなくクライアント端末側の設定も見直しましょう。例えばPCでWi-Fiが遅い場合、無線LAN子機のドライバが古く不安定になっているケースがあります。各端末(スマホ・PC)のWi-Fi設定で省電力モードや周波数固定設定などがないか確認します。特に古いPCではデバイスマネージャの無線LANアダプタ設定に「5GHz優先/2.4GHz優先」などの項目があったりします。必要に応じて最新ドライバへの更新や、設定の見直し(自動バンド選択を有効にする等)を行いましょう。また、最近のルーターはバンドステアリング機能で2.4GHzと5GHzを同じSSID名にまとめ、電波状況で自動切替するものがあります。便利な機能ですが、「端末が常に2.4GHzに留まってしまう」ケースも稀にあります。もし一つのSSIDしか見えない環境で5GHzに繋がらない場合、ルーター設定でバンドステアリングをOFFにしてSSIDを分離し、手動で5GHzに接続して試すのも有効です。

● ルーターのファームウェアアップデート

ルーター本体のファームウェア(内部ソフト)を最新版にアップデートすることも重要です。メーカーから性能改善や不具合修正のアップデートが提供されている場合、適用することで通信速度や安定性が向上することがあります。特にWi-Fi関連のファーム更新では、DFS動作の改善や接続相性の解消、帯域制御の最適化などが図られることがあります。管理画面の「ファームウェア更新」メニューから最新版があるか確認し、指示に従ってアップデートしてください。アップデート後はルーター再起動や端末側の再接続を実施し、状況が改善するか見てみましょう。

以上、主な対処法を挙げました。まずは簡単に試せるものから順に実行し、様子を見てください。それでも改善しない場合、次章で述べるような中継器やメッシュWi-Fiの導入といった検討に進みます。

6. 環境別トラブルシューティング(集合住宅、戸建て、メッシュWi-Fiなど)

Wi-Fiの最適解は住環境によって異なるため、状況別の追加対策も考えてみます。

● マンション・集合住宅の場合:
集合住宅では周囲に多数のWi-Fiが存在し、電波の混雑が避けられません。特に2.4GHz帯は隣接世帯のAP同士で干渉し合い、思ったように速度が出ないことがあります。この場合は5GHz帯を優先的に使うのが基本です(動画視聴や高速通信は5GHz、遠距離やIoT機器は2.4GHzに分ける運用)。ただしマンションの構造上、鉄筋コンクリート壁が厚く各部屋を隔てるため、5GHz電波が部屋間で減衰しやすい点には注意します。例えばルーターをリビングに置いていると寝室には5GHzがほとんど届かない、といったことも起こり得ます。その際はルーターの位置を可能な限り住戸中央にするか、届かない部屋には後述の中継器を設置するなど検討しましょう。また、マンション高層階ではW56帯利用時に気象レーダー波を受信してDFSが働く可能性もあります。高層階で頻繁に5GHzが切れる場合は前述のようにW52固定でDFSを回避すると安定することがあります。

● 戸建て住宅の場合:
戸建てでは周囲の干渉は比較的少ないものの、家の中でのカバー範囲が課題になります。2階建て・3階建ての場合、1台のルーターで全フロアをカバーするのは難しく、特に5GHzは上下階への到達が弱まりやすいです。可能であれば各階に有線で中継用APを置くか、難しければメッシュWi-Fiを導入して電波を中継するのが有効です。戸建てでよくあるのは「ルーターが1階玄関付近にあり、2階奥の部屋で5GHzが入らない」等です。この場合、ルーターをできるだけ中央か上階寄りに移す、あるいは中継器を階段付近のコンセントに挿すなどしてカバーエリアを広げます。また、庭やガレージなど屋外でWi-Fi使いたい場合は、安全面から5GHz屋外利用は禁止(日本では法律で5GHz帯屋外使用はW56帯のみ可だが個人宅では対応機少)なので、2.4GHzの利用や屋外用中継器の設置を考えます。

● Wi-Fi中継器(リピータ)の活用:
特定の部屋だけ電波が弱い場合、中継器の追加は手軽な改善策です。コンセント直挿しタイプの中継器であれば工事不要で、電波が届かない場所だけをピンポイントでカバーできます。例えばリビングのルーター→廊下の中継器→奥の寝室、と中継器を介せば寝室でも5GHzの電波強度が向上するでしょう。ただし中継器には注意点もあります。一般的な単独中継器は、同じ帯域を中継に使うと通信速度が半減します。5GHzを中継するなら中継器とルーター間も5GHzで通信するため、1回の中継でスループット50%程度ロスが発生します。これを避けるにはデュアルバンド中継器で「片方の帯域を中継専用にする」方法があります(例えばルーター-中継器間を5GHzバックホール、端末とは中継器の2.4GHzに繋ぐなど)。製品によっては中継先の帯域を固定できる機種もあるので、用途に合わせて設定しましょう。いずれにせよ、中継器は「届かない場所を埋める」応急策として有効ですが、設置場所によっては却って不安定になる場合もあるため、ルーターとの距離感(電波が十分届く範囲に中継器を置くこと)に気を配ってください。

● メッシュWi-Fiの導入:
家全体をシームレスにカバーしたい場合、メッシュWi-Fiシステムが効果的です。メッシュWi-Fiは複数のルーター(ノード)が無線網を形成し、自動的に最適な経路でデータを中継してくれる仕組みです。戸建てで部屋数が多い場合や3階建て以上、あるいはマンションの広い間取りなどでは、初めからメッシュ対応ルーターを採用するのも一つの方法です。「ルーター間で最適な電波を自動調整してくれるため、移動中でも途切れにくい安定通信が可能になる」とされており、家の中をスマホで移動しても5GHz⇔2.4GHzやノードの切り替えがスムーズです。メッシュWi-Fiの欠点は初期コストがやや高い点ですが、最近は安価なメッシュ対応機種も増えてきました。また既存のルーターに後付けでメッシュ子機を足せるメーカー独自機能(バッファローの「おかわりルーター」等)も登場しています。家全体のWi-Fi品質を底上げする選択肢として、メッシュWi-Fiは将来性も含め有力と言えます。

以上、住環境ごとのポイントを述べました。共通するのは、「必要に応じて電波を届ける仕組みを追加する」ことと「帯域やチャネルを適材適所で使い分ける」ことです。なお、中継器やメッシュを導入しても改善しない場合は、そもそものインターネット回線品質(例えば夜間帯の輻輳)に原因がある可能性もあります。その際は光回線への乗り換え等も検討が必要です。

7. 主要ルーターメーカー別設定ガイド(TP-Link、Buffalo、NEC、ASUS 等)

最後に、代表的な国内Wi-Fiルーターメーカーの設定項目を例に、上記対策を実践する手順やポイントを補足します。お使いのルーターによって画面や用語は異なりますが、ここではTP-Link(ティーピーリンク)、Buffalo(バッファロー)、NEC(Atermシリーズ)、ASUSの4社を取り上げます。それ以外のメーカーでも共通する部分が多いので参考にしてください。

◆ TP-Linkの場合:
TP-Linkルーターでは、まず管理画面(http://tplinkwifi.net 等)にログインし、「詳細設定」→「ワイヤレス」の項目を開きます。2.4GHzと5GHzの設定が分かれているので、5GHz側を選択します。チャネルとチャネル幅は初期では自動設定ですが、手動変更も可能です。先述の対策通り、チャネルは36~48のいずれか(W52内)に固定し、チャネル幅も40MHzか自動にするとよいでしょう。TP-Link公式FAQでも「特定端末が5GHzに接続できない場合は36/40/44/48のいずれか、帯域幅40MHzに」という設定例が示されています。設定変更後、保存(適用)ボタンを押せばルーターが再起動して反映されます。TP-Linkの場合、スマホアプリ(Tether)からはチャネル変更ができないため、PC等のブラウザからログインして設定を行う必要があります。

◆ Buffalo(バッファロー)の場合:
バッファロー製ルーターはWeb設定画面で「無線設定」「5GHz帯」のような項目があります。機種によっては「11a/n切替」「チャンネル自動/手動」といった表示かもしれません。基本的には「チャンネル:自動➡手動」に切り替え、ドロップダウンから使用するチャネル番号を選択します。

おすすめはやはり36か44ch付近ですが、もし周囲に少なければ52ch以上を選んでも構いません。ただしバッファローの取扱説明書によれば、52ch以上を手動設定した場合、レーダー干渉検出時には自動で36chに移動してそのまま固定される動作になるとの記述があります(DFS機能のため)。

そのため、最初から36ch固定でも結果は同じとも言えます。チャネル幅について、バッファローではUI上「帯域: ○○Mbps(○○MHz)」という表記があり、たとえば5GHzで高速通信したい場合は「866Mbps(80MHz)」を選ぶよう案内されています。これは11acの80MHzモードを指し、初期値では自動または80MHzになっている機種が多いです。

安定しない時はあえて「400Mbps(40MHz)」に落としてみるのも一法でしょう。設定変更後、「設定」ボタンを押せば反映されます。なお、バッファローのルーターには「干渉波自動回避」という機能もあり、強いノイズを検知すると自動でチャネル変更する設定が用意されています。環境によってオンオフ試すのも良いでしょう。

◆ NEC Atermシリーズの場合:
NECのAtermルーターは「クイック設定Web」と呼ばれる設定画面を持ち、「基本設定」「詳細設定」モードで内容が分かれています。詳細モードで「Wi-Fi設定 (5GHz詳細設定)」の画面を開くと、各種オプションが一覧できます。ポイントは二つあり、チャネル帯域と使用チャネルです。

Atermでは「クワッドチャネル機能(初期値:使用する)」という設定項目があり、これは80MHz幅(4チャネル束ねての高速通信)を有効にするかを意味します。デフォルトは「使用する」(80MHz優先)ですが、安定性重視なら「使用しない」に切り替えて常に20MHz×2チャネル程度までに制限することも可能です。

実際、注意書きにも「環境によっては80/40/20MHzに自動で切り替わるため、設定を使用するにしても接続が20MHzになる場合がある」旨が記載されています。つまり子機側や電波状況に応じて自動Fallbackする機能がありますが、自らオフにすることで最初から干渉を抑えることができます。次に「使用チャネル(初期値:W52)」という項目では、利用する5GHz帯域をW52/W53/W56から選択できます。初期状態でW52になっているのは、DFSを考慮した安全策と言えます。

ここを例えば「W56」に固定すると、より空いている代わりにDFS検知で停止リスクが生じます。よって基本的にはW52固定がおすすめです。Atermの場合、送信出力を15%刻みで落とす設定(初期100%)も可能で、電波が強すぎて隣家と干渉する際などには70%程度に下げることもできます。設定変更後は「設定」ボタンを押し、その後ルーター再起動が必要な点に注意してください。

◆ ASUSの場合:
ASUS製ルーター(例:Wi-Fi 6対応のRT系)では、管理画面の「詳細設定」→「ワイヤレス」メニューに進みます。右上で2.4GHz/5GHzバンドを切り替えて設定します。5GHz設定画面ではチャネル幅(帯域)やチャネル選択の項目があります。

ASUSでは160MHz帯域をサポートする機種が多く、初期状態で160MHz有効&DFS含む自動選択となっている場合があります。これを安定優先に切り替えるには、「160MHzを有効化」のチェックを外し、「DFSを含むチャネルの自動選択」もオフにします。その上でチャネルを手動で36や48等に指定すれば、DFS帯を使わず80MHz幅以内で動作させることができます。

ASUSの公式FAQでもDFS回避設定として同様の手順が紹介されており、これによりゲーム用途などでも5GHzの安定性を確保できるとされています。設定適用後、ルーター再起動なしで即反映されますが、念のため接続端末側で電波強度や速度が向上したか確認しましょう。またASUSには「Adaptive QoS」や「AirRadar」等の独自機能もありますが、これらは帯域制御や電波ビームフォーミング技術で、基本的にONで問題ありません(むしろ通信安定化に寄与します)。5GHzが不安定だからといってOFFにする必要は通常ないですが、ファームのバグで問題を起こすケースでは一時的に切ってみる手もあります。

◆ その他メーカー:
Elecom(エレコム)やIO-DATA(アイ・オー・データ)など国産メーカーも、基本的な設定項目は同様です。チャネル固定帯域幅設定、DFS有無などを調整できるモデルが多いので、取扱説明書やサポートFAQを参照してください。近年はスマホアプリで簡易設定しか提供しない機種もありますが、その場合PCから「詳細設定画面」に入る方法がメーカーサイトに記載されています(例:Elecomはhttp://192.168.2.1、IODATAはhttp://192.168.0.1など)。自信がない場合は設定変更前に現在の設定をメモしておき、元に戻せるようにすると安心です。

以上のように各社ルーターで5GHzの設定をチューニングすることで、多くの問題は解決に向かうはずです。特に「知らない間にDFSチャネルを掴んでいた」「チャネルが近隣と被っていた」「帯域幅が環境に不適切だった」というケースは設定変更だけで劇的に改善することがあります。メーカー公式のサポート情報も参考に、最適な構成を見つけてください。

8. 結論:最適化の優先順位と将来のWi-Fi6E/7への展望

本記事では、5GHz帯Wi-Fiが思ったように速度を発揮できない原因と対処法を詳しく解説しました。総括すると、以下の優先順位で最適化を進めるのが近道です:

  1. 環境の見直し – ルーター位置や周辺の干渉要因を改善(中央配置・高所・遮蔽物回避)

  2. ルーター設定調整 – チャンネル・帯域幅・DFS設定の最適化(5GHzはW52帯40MHz程度から試す)

  3. 中継器・メッシュの活用 – 届かない場所を補完し、家全体をカバー

  4. 回線品質の確認 – それでも遅い場合は回線そのもの(プロバイダ混雑等)の影響を疑い、必要なら上位回線へ乗り換え

一つ一つ原因を切り分けていけば、闇雲に機器を買い替えたり設定をいじり倒したりせずに済みます。まずは今日できる範囲で、ご自宅のWi-Fi環境をチェックしてみてください。

最後に、将来のWi-Fi規格への展望にも触れておきます。近年登場したWi-Fi 6Eや今後本格化するWi-Fi 7では、新たに6GHz帯という周波数が利用可能になりました。6GHz帯は5GHzよりさらに高い周波数で、電波の直進性が極めて強く届く範囲はさらに短くなりますが、その代わり利用可能チャネル数が飛躍的に増加し、干渉の極めて少ない広大な帯域を使える点が画期的です。これにより数Gbps級の超高速通信や低遅延のリアルタイム通信が可能となり、一度に多数の端末が接続しても安定するポテンシャルを備えています。Wi-Fi 6E対応ルーターは徐々に普及し始めており、日本でも6GHz帯(5925-6425MHz)が免許不要で解放されました。現状では対応端末が少ないですが、今後スマホやPCでも対応が進めば、5GHz帯の混雑を避けて快適な通信ができるでしょう。

さらにWi-Fi 7 (IEEE 802.11be)では、6GHz帯を含む複数帯域を同時活用するマルチリンクオペレーション (MLO)など革新的な機能が導入されます。MLOとは複数のバンドやチャネルを束ねて同時通信する技術で、AP(アクセスポイント)と端末が異なるバンド(例えば5GHz+6GHz)で並行してデータを送受信できます。これによりトラフィックを異なる帯域に分散し、スループット向上や遅延低減、干渉耐性の強化が図られます。簡単に言えば、2.4GHzのカバー範囲と5/6GHzの高速性を同時に活かすことで、「遠くでも速いWi-Fi」を目指す技術です。Wi-Fi 7では他にも320MHz幅や4096QAM対応などにより理論上Wi-Fi 6の4倍以上のスループットを実現するとされています。まだ規格策定段階(2024年以降順次製品化)ですが、数年内にはこれら次世代Wi-Fiが家庭にも普及していくでしょう。

とはいえ、こうした最新技術を待たずとも現行のWi-Fi 5/6世代機器でも設定と環境次第で性能を最大限引き出すことが可能です。まずは本記事で紹介した基礎と対策を踏まえて、ご自宅のWi-Fiを最適化してみてください。安定性を重視すべき場所では2.4GHzを、速度を活かしたい場所では5GHzをといった使い分けも有効です。適切なチューニングにより、「5GHzなのに遅い」という悩みはきっと解消できるはずです。将来的に端末がWi-Fi 6E/7に対応した際には、さらに快適な無線環境が待っているでしょう。今できる最善策を施しつつ、次世代の展開にも期待したいところです。

ユーザーの皆様も、本記事を参考にご自身のWi-Fi環境を見直し、最適な形で高速通信を楽しんでください。快適なネットワーク環境づくりの一助になれば幸いです。

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